退屈は死よりも恐ろしいね。
何も無いし何も持ち込めない精神病棟の特別観察室に3週間入っていて、悟ったことがある。
「退屈は死よりも恐ろしい。」
気が狂うかと思ったね。
朝の検温と診察、3回の食事投薬以外は、本当に「無」なのである。
まさか本当に天井のシミを数える日が来るとは…
特別観察室を出て閉鎖病棟に移ってからは、退屈なのは少しマシになった。
人と話せるというのもあるが、テレビの存在が大きかった。
ロビーにごく小さなテレビが1つだけあり、80人の患者全員がその1つだけのテレビを見て、暇を潰していた。
そんな中、とても印象に残ったことがある。
強い台風によって、テレビのアンテナが壊れてしまったのだ。
テレビはほとんど砂嵐で、ついたり消えたりと、とても見れるような状態ではなくなってしまった。
だが、
皆、その壊れたテレビを、じっと見ているのである。
壊れたテレビでも、多少は暇を潰せるからだ。何も無いよりは、マシなのだ。
その光景は、本当に異様だった。
退屈というものは、死よりも恐ろしい。